新型コロナウィルスの世界的流行(パンデミック)は未だ収まらず、我が国では4月末に出された緊急事態宣言が5月31日までに延長された。今後どうなるのだろう、いつ流行は収まるのだろうと心配する人々は大勢いる。
先日、Newsweek日本版(1740号、4月27日発行)を読んだ。「歴史に学ぶ 感染症の終わり方」という特集が組まれていた。國井修先生(グローバルファンド[世界エイズ・結核・マラリア対策基金]戦略的投資効果局長)が歴史上のさまざまなパンデミック(ペスト、天然痘、コレラなど)を概説し、疫学的終息という完全に疾病を根絶する状態にまで至らなくとも感染者を減少させて、社会的終息という形に持っていくことはできる。すなわち、どんな疫病でもいつかは「終わる」と述べている。もう一つのspecial report で山本太郎先生(長崎大学熱帯医学研究所教授)が今後の行方として3つのシナリオを提示されている。①最悪のシナリオは、新型コロナウィルスが変異をたびたび起こし、世界中のあちらこちらで新規感染者が増加し、都市の封鎖と解除を繰り返すというものである。②次に、変異の結果、比較的穏やかな風邪症状を引き起こすウィルスとして定着するが、感染者を重症化させることはなく、人々がこのウィルスと共存するというシナリオである。③第3のシナリオはウィルスを完全に根絶した社会である。ただし、歴史的にみてこれまでに根絶できた感染症は天然痘だけである。以上の3つのうち②のシナリオが最も妥当だろうと山本先生は述べている。そのためには、今、我々は重症化した人の命を失わないように医療体制を整え、社会的・経済的に困窮した人々の生活を破綻させないようにしつつ、早く集団免疫を獲得しなくてはならない、としている。ワクチンには稀だが副反応が必ずあるが、それでもワクチン接種をする理由はワクチン接種が社会の利益になり、また個人の利益に適うからである。
ワクチン供給量が増え、人々へのワクチンの速やかな接種が待ち遠しい。