院長ブログ

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新型コロナウィルス感染症パンデミックの行方

新型コロナウィルス感染症パンデミックの行方

2022年09月16日

2019年12月に中国・武漢で発生した新型コロナウィルス感染症は翌年2月に日本に上陸し、瞬く間に世界中に拡がりました。3月にはWHOがパンデミック宣言を発しました。以来2年半に亘ってパンデミックは続き、今なお、我々は対応に追われています。今後どうなるのでしょうか?

コロナウィルスは従来から存在しているウィルスの一種でいわゆる風邪の原因ウィルスの一つでした。それが何らかの機序で突然変異をして全く新しい性質のウィルス感染症となりました。発生後比較的早くこの新型コロナウィルス感染症では症状が進むと命を奪う危険な感染症であることが分かりました。世界中の医学者がこの感染症の研究に集中したと考えていいでしょう。そのおかげで診断法、治療法、予防法などほぼ白紙からのスタートでしたが次々と対策が生まれました。まず感染症研究者の中に、新興感染症の発生が十分ありうると考えmRNAワクチンの基礎研究をしていた人々がいました。そこから通常ではありえないほど早く新型コロナウィルスに対するワクチンが製造されました。また、新規感染症に対して手探り状態でも直ちに簡便な診断法が開発されました。

我が国では今日までにコロナ感染症の流行の山が7つありました。現在9月下旬、第7波が峠を越え次第に感染が収まってきています。この第7波はオミクロン株と呼ばれている変異したコロナウィルスで感染力が格段に強いウィルスでした。佐野市民病院でも7月下旬にクラスターが発生しました。いったん収束したかにみえましたが、別の病棟でクラスターが発生しおよそ1か月の間、当院は感染拡大を防ぐ対策に追われ、日常診療、救急医療に大きな影響が及びました。この時、佐野市民病院を頼ってこられた患者さん達の要望を充分に応えきれなくなり、大変申し訳なかったと思います。

さて我が国の政府はじめ世界中の国々で実施されているwith コロナ政策は現実的で妥当な対応だと思います。これから緊急事態宣言は多分発出されることはないでしょう。このまま新型コロナウィルス感染症がなくなればいいのですが、そうならずに第8波がおそらく襲ってきます。その波が小さな波でおさまってほしいと願うとともに、さらに有効な新規治療薬が開発されていることを期待しています。

今から100年以上前にスペイン風邪が世界中を席巻しました。速水融先生がその流行の様子を綿密に調査され、「日本を襲ったスペイン・インフルエンザ」(藤原書店、2006年)という本を上梓されています。その最後に「教訓」としてこう書かれています。

・・・・医学上、病原体を見つける努力を続けるのは、豊富な研究資金、そして卓抜し、かつ忍耐心のある研究者群が必要であり、かつそれを支持する政府、マスコミ、世論も必要であるが、日本にはそのどれもが欠けていた。・・・・

耳の痛いことばではありますが、今、新型コロナウィルス感染症あるいは全く新しい新規感染症について政府の展望ある施策、基礎研究者の努力、国民・マスコミの成長が必要だと思います。

令和4(2022)年9月15日

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